世界恣意的愛

 

涼さんの輪郭をふちどる「かけら」をふと手に取った時、楽しいような、嬉しいような、なんだか不思議な気持ちになる。見えないものが見えたこと、見えないものがまた見えなくなったこと、その「かけら」で知った気になること、それでもやっぱりぜんぜん知らないと気づくこと、そのどれもがどうしようもなくわたしのこころをあたためていく。オノマトペとしていちばん近いのは、たぶん「ウキウキ」だ。涼さんを知ることは、ウキウキすることなのだ。

知らないでいるのに知った気になって、知ったような顔をして彼のことを話すのはひどくたのしくて、彼がくれる虚像とわたしが持っている彼のかたちをした虚像に解釈違いが生じない限りはきっといつまでもそれが「たのしい」のまんまなんだろうなあと思う。

 

わたしは彼型の虚像を内腔に持っているけど、彼がどんな人か、と問われるとそれを言葉にするのがむずかしくってしかたない。脳内にちっぽけながらも語彙工場はあるはずなのにその生産レーンは全く機能しなくて、ただわたしはかけらをひろうとき、「これがこの人だ」と思うだけ。そのかけらを彼だと認識できる部位がなんなのか、ぜんぜんわからない。ひとから借りてきた誰のためなんだかわからない言葉にはできても、わたしの内腔の虚像にストンと当てはまることばは出てこなくて、つまりわたしは橋本涼がわからないのだ。唯一わかっていることは、彼の容姿が果てしなく好きということだけだよ。

わからないからたのしいと思うし、知りたいと思う。どうしようもなく好きだと思うところがなんなのか、どこなのかわからなくて、たぶんわたしはずっとそれを探し求める旅の序章のまま進めないんだよなあ。

 

どのくらいの負担をかけているのだろうか、とたまに思ったりする。それはわたしが測り知ることではないし、彼が見せるべきことでもないし、見せてほしいなんて思わないけど、「クリスマスにデートなんて夢のまた夢」なんて言われてしまうと、足枷をはめてしまっている気分になる。それをつけているのは彼自身で、涼さんもわかっているからそんな発言が出ると思うんだけど、「クリスマスにデート」という言ってみれば「ふつう」をできないことを改めて本人から思い知らされる。その足についているのは、ちゃんとアンクレットなんだろうか。足枷になってはいないだろうか。

休みたい時に休めないし、ひとつ仕事が終わったからと言って息をついていい環境でもないし、変化の中で変化と不変を保ち続けなきゃいけないし、そういういろんな「必要」に追われて生きてきてるんだろうなあ。せめてそれが彼にとっての「ふつう」になってしまっていたらいい。そう思ってくれている限りは、足の飾りはまだアンクレットだと思うから。

好きなことをしてくれたらいいなあと思うし、好きなことを夢にしてくれたらいいなあと思う。アイドルでなくなった涼さんに興味を持てるかなんて今わかることじゃあないけど、進みたい道を見据えた時その足についた輪っかが足枷になるのなら、外してくれて構わないと思う。でもそれと同じくらい、わたしはいつまでもその「アクセサリー」の輝きを追いかけていたくて、支離滅裂だけど、つまり彼のアイドル人生ができるだけ長く続けばいいなあと思うということです。わたし、涼さんはめちゃくちゃアイドルに向いてると思ってるし、アイドルの才能あると思ってるからさ。あなたよりアイドルする人、わたしほかに知らないからさ。ね。

負担を負担と思うな、と言いたいわけではなくて、感じる負担は少しでも小さければいいとか過保護なことを思ってしまうんです。今更心配されることでもない、なんて一蹴されてしまいそうな気もするけれど。

 

どんな些細なことにも感謝を見つけられるところが好きで、それを伝えたり表したりする時に言葉選びを恥ずかしがらないところも好きで、たぶん特別でもなんでもない日常的なことなんだろうなあって思ってしまうくらい、そういうのがほろりと会話に出てくるところが好きだ。わたしね、涼さんが自分と瑞稀くんを「運命共同体」と言ったこと、一生忘れられないと思うんだ。素直で聡くて捻てるけど擦れてない涼さんだから出てきた言葉だと思う。運命共同体って、それ、涼さんが行くところには瑞稀くんもいて、瑞稀くんが見る未来は涼さんが見る未来ってことだよ。涼さんにとって、瑞稀くんはそんな存在で、わたしはわたしのすきなひとがそんなふうに思える人が瑞稀くんであって本当によかったと思うしすごくうれしい。人が生きる中でそんなこと感じられるのなんて、きっとほんのひと握りだから、涼さんにその相手がいること、それを伝えてもらえること、全部うれしいよ。

衣装をたくさん作ってもらってうれしかったとか、ゆうぴーはハイハイのこと考えてくれてるから愛を届けたいとか、しーくんやしめちゃんがデビューしたら泣いちゃうだろうなとか、なんか、そういう「かけら」があんまりに好きで、感情が涙になるしかないときがある。涼さんって本当人情深い人なんだろうなあ。受け取ったものを真っ直ぐ返すことにもそれを伝えることにも照れがなくて、そこはかとなくまぶしい人間だなあって思う。

 

わけわからんこと言うところも好きで、自分で自分の発言に爆笑してるところとかこの人本当頭おかしいなって思って腹の底から声出して笑っちゃうし、それなのにリカバリー力は高くて周りが見えてて臨機応変に対応できちゃうんだもんよ〜。いつだってわたしが理解するには到底及ばないんですよね、橋本涼さんは。あーあ、たのしいなあ。

 

ぜんぜんまとまらないんだけど、要はわたしが涼さんのことを好きという話で、その好きな人が今デビューを目指しているというのならわたしはその未来しか見たくないな〜と思う。アリーナツアーでもドームコンサートでもなんでもやろうね、きっと叶うよ。ファンだから無責任なこと言っちゃうよ、ファンだから。広い会場がペンライトの青色で埋まるのはいつかなあ、待ち遠しいね。