必須科目:幸せ

先月さよならを告げたつもりのひとのことを、今更やっと知った。わたしの中で引かれていた線は、おおきな波にのまれて消えてしまいそうだ。ちいさな波が押し寄せるたび、線の端からじわりじわり侵食されていくのを感じていたけど、もう限界かもしれない。区切りをつけたと思っていた。思っていただけだったみたいで、そして短期間でわたしにそれはそれは深い爪痕を残したそのひとのことをなんでもない気持ちで見ているなんて無理な話だったみたいだ。もっと前に知っていたかったなあと言うのは、あんまりにわがままだろうか?ごめん、許してください。それでも好きなんです。

 


末澤くんは、大学に行っていたらしい。そんなことすら知らなかった。わたしが出会ったときの彼は22歳で、そうか、あのとき卒業のタイミングだったのか。2年も経ってから知るなんて間抜けだね。でも今じゃなかったらたぶん たぶん知ることはなかったと思う。


ちらりと小耳に挟んだりしていた末澤くんの「仕事がなかった時期」の話を本人が話していた。小耳に挟んでいた程度でどのくらいの期間仕事がなかったのかとか、本人がどう思っていたのかとか、やっぱりなんにも知らなかったわたしは、ガチンと杭を打たれたみたいだった。十字架に磔になったような、なったことがないからわからないけど、例えるならそんな気分だった。誰に向けて晒しあげられているわけでも、誰から晒しあげられているわけでもないけれど、たまらない気持ちになった。末澤くん、末澤くん、そんな気持ちだったんだね。知らなかった。

仕事を辞めたいと思ったことはあるだろうと想像するのと、そう思ったことがある、辞めようと思うとマネージャーに伝えたと言われるのとは、ぜんぜんちがった。辞めたいって思わないのかなあって、ふと、悲しくなるくらいふと思ったことがあったけれど、それとは比べ物にならないくらいの息苦しさだった。過去のことだから、過去のことになっているから申告できることなのだと思う。現在について語るにはあんまりに不利というか、不安定というか、そういう立場だと思うから、きっとそんなこともあったねと話せるくらいの「過去」なんだとは思う。末澤くんは、人前に立つ人格を捨てようとしたことがあって、もし、もしそうなっていたらわたしの人生どのくらいちがったんだろう。そんなときだってわたしは自己中な人間だから、末澤くんがいなかったとき、出会えなかった時のわたしの人生を考えた。たぶんわたしは、わたしは こんなに苦しい思いをしなくて済んで、だけど、こんなに愛しいと思うひとに 幸せになってほしいと心の底の底から願えるひとになんて出会えなくて、こんなに泣いたりなんてしなかった。

愛おしくって、幸せになってほしいってなんでもない夜に思うこと このひとがしあわせになってくれたらこの世界どんなに愛せるかなって布団をにぎりしめること 苦しいならばいっそ嫌いになってしまいたくて歯ぎしりしながら泣くこと 全部なかったんだと思う。わたしの人生豊かにしたのは、明らかに、明らかに末澤誠也さん、あなたです。苦しさも切なさも、喜びも嬉しさも、感情ぜんぶ100倍にも1000倍にもしてくれたのは、末澤くん、君でしかないよ。

ねえ、ねえ、大学2年の末澤くん。辞めないでいてくれてありがとう。20歳の末澤くん。人生の分岐路に立って、それでもマネージャーさんの言葉に引き止められてくれて、本当に本当にありがとう。受けてみるかってそれでも思ってくれてありがとう。末澤くんは愛されるべきひとなんだよ。

 


ファンの人が思っている何百倍も強いなんて、それを口に出せる末澤くんは、きっとわたしが思ってる何億倍も、それ以上にだって強いんだろうなあって思う。見くびっててごめんね。しんどいなかでも誰かを笑顔にする仕事。そうなのかもしれないし、その言葉を投げかけられる文一くんも、その文一くんの言葉を大事にできる末澤くんも、どっちも素敵でだいすきだけど、それでもしんどいときはしんどいって言える場所があってほしいよ。それがわたしみたいなファンの前でなくってもいいから、泣きたい時は泣いて、嫌な時は拒否して、そういう子供みたいに駄々こねるときがあったっていいんだよ。そうあってください。人間であるところを殺してまでステージに立ってくれていること、これでもかってくらい知っているから、だから、だから。人間であること、忘れたりしないようにするから。ありのままであれる場所を持っていてください。見つけているなら、見つけたなら、必ずしがみついて離れないでください。

 


めそめそしていたわたしが弱かっただけみたいだ。末澤くんはずっとずっと強くて、ずっとずっと前を向いていた。心配してくれている人もいるかもって、でも切り替えて前を向いているよって、チャンスだと思ってるって、そういうところが好きなんだと思った。わたしは、わたしはあなたの、大事な時に大事なことばを包み隠さないでそのまんまストレートを伝えてくれるところがだいだいだいすきだよ。幾度となく救われてきたよ。


弱虫で臆病で自己中で、だめなところばっかりのわたしだけど、末澤くんのことまだ応援していたい。担当とか、そうじゃないとかわからないから、出戻りって言われるのか言っていいのかわからないけれど、それでもわたしがいちばん幸せになってほしいと願うひと。それが末澤誠也さん。

末澤くん、このことば、今まででいちどだって贈っていなかったね。情けないけど、いまさらだけど、いちばんがひとりじゃないかもしれないけど、いわせてください。


あなたのことがいちばんすきです。幸せになってください、必ず。